乃木坂46「走れ!Bicycle」全国握手会@幕張メッセ

今年の8月くらいから乃木坂46良いな、と思うようになってCDを買い集めたり、出演番組を見たり、まとめブログを見たりして、それなりにハマっていった。で、現場があるなら行こうかな、と思っていたら幕張メッセで全国握手会があるとのことなので、行ってみようと思った。
しかし握手会といってもメンバーに言いたいことがあるわけでもない。かつて自分はハロプロの現場に足しげく通っていて握手会にも幾度となく参加したが、ハロプロの握手会は「高速」なのでメンバーと相対できる時間はほんの数秒くらいなのが常であり、一言言ったらもう流されてしまう感じなので、事前に話すことなど考えなくても済んでいた。しかし各所の伝聞から、AKBの握手会は結構メンバーとちゃんと話せるらしいという印象を持っていたので、これは事前にメンバーと話すことをある程度考えておかないとまずいだろうと思った。しかしとくに話したいこともない。日々アップされるメンバーのブログに書かれた内容を話題にするのが無難かとも思うが大してブログとか読んでいないのでそういうことも話せない。メンバーのブログをはじめ一番の情報源であるところのネットでの情報収集を自分は大してしていないし、そういうことを教えてくれるヲタ友がいるわけでもない。結局はハマったと言ってもその程度のものだ。
だからこの握手会も数日前までは行かないでおこうと思っていたが、公式サイトの握手会の詳細情報を見るとミニライブがあるとのことで、これは見たいと思った。なんならライブだけ見て握手せずに帰るのもアリか、と思った。


当日。この日は早朝から仕事で所用があって出発が遅れた。電車で向かいたかったが電車だと到底間に合わなさそうなので自家用車で向かうことにした。一般道が渋滞していたことも影響し、結局着いたのは11時すぎだった。会場に入る。ハロプロ現場では考えられないくらいの人の数にビビる。AKBの客は女性や一般人が多いのだろうと思っていたが、この日の印象ではそうでもないと思った。いかにもアイドルオタクらしい風貌の人が多数派で、その点ではハロプロ現場とのギャップをあまり感じなかった。
ステージではスペシャル抽選会が行われていた。ステージとの距離が遠くてメンバーは米粒くらいの大きさであり誰が誰だかまるで判別がつかない。マイクの声もよく聞き取れない。ちゃんとライブを見ようと思ったら早いうちに会場に乗り込んで前方の位置をキープしとかないとだめなのだ。自分はすっかり意気消沈して、メンバーのお決まりの自己紹介に合いの手やらコールを入れる会場の群衆のノリにもついていけず、また、自分のすぐ後ろにいたヲタがずっと大声で意味不明のことを叫んでいるのでどんどん気分が塞ぎこんでいく。と、ステージ上で曲が始まりそうな気配になり、MCに耳をこらすとMCの話していることの中に「ピチカート・ファイブ」という単語が聞こえる。「え、なんでいきなりピチカート・ファイブの曲やるの?レパートリーにそんなのあったっけ?東京は夜の七時でも歌うの?バニラビーンズみたいだなあ」と困惑していると「せっかちなかたつむり」の演奏が始まる。いまだにこのとき「ピチカート・ファイブ」という単語として自分に認識された音声の正体がわからない。「せっかちなかたつむり」はとても好きな曲だ。観ているうちにだんだん気分の高まりを覚える。しかし、演奏はワンコーラスで終わった。えー!テレビ番組でもないのにフルでやらないのー!?その後いくつかの告知とさいきんメンバーとして復帰した秋元真夏ちゃんの挨拶があり、最後に「走れ!Bicycle」が披露され、ミニライブは終わった。握手会が始まろうとしていた。
懸念事項であるところの「メンバーと話すことが無い」という問題と、なんとなく気分が萎えてきてしまったのもあり、もう帰ろうかと思うが腹が減ってきたので帰る前に昼食を取ろうと外に出た。<ワールドビジネスガーデン>という飲食店などが集合的に入った建物があり、その中の<酒・菜ざんまい 甲子>という店に何も考えずに入る。「あなごどんぶり」というのを食べた。穴子の天ぷらの天丼だ。しかし穴子が異様に生臭くて、めったに飯を残さない自分でも食べきることができず、ひと切れまるまる残した。
飯を食いながら握手会をどうしようか改めて考えてみた。考えているうちに、まだ乃木坂に復帰して間もない秋元真夏ちゃんなら握手できるかも、と思った。けっきょく自分は、新参丸出しの見当外れなことを言って恥を書きたくなかっただけなのだということに気付く。きっとこの子ならまだ情報も少ないだろうし、当たり障りの無いことを言っても大丈夫だろう。また、携帯で真夏ちゃんのブログにざっと目を通し、とりあえず質問も考えてみた。


握手する決心が固まり、会場に戻る。握手会は17のレーンに分かれて行われ、一レーンあたり2人のメンバーが配置されていた。まず驚いたのが、レーンによって列の長さに歴然と差が出ているということだ。会場から入って奥のレーンに行くにつれて、列が長くなる。手前のレーンはほぼ列が無いくらいのところもあり、大して並ばずに快適に握手できそうだ。で、奥に行ってよく見てみると第2レーンと第3レーンがずば抜けて列が長い。奥に行くほど列が長くなるようなメンバーの配置の仕方をしているらしい。しかし、一番奥の第1レーンを見てみると、ほとんど列が無い。これは……。握手レーンの列の長さはそのままメンバーの人気の度合いだろう。それがこうも目に見える形で差が付いているというのはさすがにシビアというか……。メンバーの心境を考えると複雑な気持ちになる。
秋元真夏ちゃんのいる第17レーンは一番手前に配されていたが、これは3番目くらいに列が長かった。やはり今日が初握手のメンバーというだけあって、とりあえず握手しとこうという人が多いのだろうか。自分も列に並ぶ。列に並びながら握手の様子を見てみると、大して真夏ちゃんと相対する時間は長くなさそうだ。二言三言言ったらもう流される、という感じ。列が長いレーンは流れを速めるようスタッフが誘導しているのだろうか。順番が来る。事前に見たブログに県庁所在地に詳しいということが書いてあったので、とある県の県庁所在地を聞いてみる。彼女は正答を述べた。「おー」と間の抜けた返ししかできない自分。「がんばってね」と言って手を振り、短い握手は終わった。県庁所在地については、しょうもないこと聞いちゃったな、と後悔したが、秋元真夏ちゃんは可愛くていい子そうだった。というか、モーニング娘。石田亜佑美にちょう似ていた。「乃木坂って、どこ?」で見た時にもそう思ったのだが、間近で見たらやっぱり似ていた。
握手が終わるとなんとなくテンションが上がってきて、もう一レーンくらい握手してもいいかなあ、と思う。でも、推しメンと握手する勇気はない。推しメンに対しては話すことをちゃんと準備して握手したい。で、まあいろいろ検討した挙句、市來玲奈ちゃん(れなりん)と衛藤美彩ちゃん(みさみさ)のいる第13レーンに決めた。携帯で二人のブログをそれぞれチェックし、話すことを決める。速攻で並ぶ。列が短いのですぐ順番が来た。
れなりん。まず、自分が今日初めて来たのだということを話す。そして、「ブログの文章がすごい知的ですね」と言ってみると、「いえいえそんな〜ありがとうございます〜」みたいな反応で、何か物腰がすごく上品というか大人びてる感じで、良かった。
みさみさ。また、自分が今日初めて来たのだと告げると「え〜ほんとですか!」みたいなやたら大きいリアクションが返ってきたので面喰う。それから「今日どうでしたー?」と向こうから質問が来たので動揺して「いや、遠くてよく見えなくて、、、」というあまりにも気の利かない返答をしてしまうと、みさみさが「あーそうかー…」と残念そうな反応を示したので、これはまずい、と思ってすぐさま「「開運音楽堂」観てます!」と言うとみさみさはとびっきりのスマイルを見せてくれたのでした。終わり。


握手券はもう一枚残っていたが、二度の握手でいっぱいいっぱいになっていたので帰ることにする。次こそは推しメンと握手しようという決意とともに……。
会場を後にし、幕張メッセの駐車場へと向かう通路を歩いていると、通路の外から何やらドラムスというかパーカッションというか、打楽器のけたたましい演奏音が聞こえてくる。なんかジャズの路上演奏でもやってるのかと思い、外に出てみると、その演奏者を見つけた。駐車場の敷地から道路一つ挟んだところの歩道脇で、一人のおっさんがスティールパンのようにも見えるドラム缶ぐらいの大きさの銀色の物体をスティックで一心に叩いている。遠目に見える風貌は、ドラびでおによく似ているが、まさか本人ではないだろう。
歩行者は全くいなく、自動車しか通らない道なので誰もギャラリーはいない。どうも誰かに見せるためにやっているわけではなく、単に練習しているようだ。あるいは密かにUSTやらニコ生で配信しているのか?しばらくその演奏を見ていると、ジャズっぽい小洒落たアドリブ感もあるしアフリカ音楽みたいなトライバル感もあって、けっこうイケていた。私はツイッターにその孤独な中年演奏者のことを報告する書き込みを残して、帰路に就いた。私は自分自身を、その演奏者と同じくらい孤独な、惨めなアイドルオタクだと思った。


走れ!Bicycle(DVD付A)

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